日本の並木道で最も多く用いられている街路樹は銀杏だという。銀杏が一斉に葉を黄色く染めるのは、冬の初め頃。ひと月にも満たない短い期間だろうか。視界のほぼすべてが黄色に染まる。銀杏並木が好きか、桜並木が好きか、意見は分かれるところかもしれない。
1990年代のフジテレビドラマには、やたらと神宮外苑の銀杏並木が登場した。当時のフジテレビドラマは、一種の都内名所ガイド的な役割を果たしていたのだろう。地方の高校生だった僕は、そんな場面をよく観ていた。思い出せる範囲だけでも『愛という名のもとに』『101回目のプロポーズ』『29歳のクリスマス』などがあった。ただ、実際にこの場所に来てみて気付いたことがある。まず、神宮外苑の銀杏並木は、歩道の両脇に銀杏の木が植えられていて4列であるということ。実は日本の並木道は、たいてい2列のコンパクト仕様である。外苑の銀杏並木は、その辺りの並木道とは違っていた。それが300m続き、正面に絵画館が立っている。
ここでビデオゲーム『シムシティ』が思い浮かんだ。ゲーム上で僕はよく並木道をつくっていた。
並木道は景観をよくするだけのものではない。防災の役割、大気汚染の浄化機能もある。銀杏は燃えにくく排気ガスに強いという性質をもっている。一方で、デメリットもある。葉の繊維が丈夫で腐りづらく、一度落ちたら道路にへばりつく。維持管理のコストがかかるから都市計画には向かないともいわれる。いまどきの財政難自治体からは、街路樹廃止論ももち上がりやすい。
もうひとつ気付いたことがある。紅葉シーズンの週末や、近くでビッグイベントが開催される時期を除いて、普段は人通りが少ない。『愛という名のもとに』の最終回には、この通りが多くの人で賑わっている場面が出てくる。しばらくすると、彼女はひとりになっている。そして、大学以来の仲間たちが次々と木の陰から現れる幻を見る。しかしドラマで形成されたこのイメージと異なり、実際には賑わっていることがまれだ。
交通量が少ない理由は、地図を見れば一目瞭然。ここを通る動線でしかたどり着けない重要施設がない。そもそも銀杏並木が300mの直線ということからもわかるが、まるで『シムシティー』で無理してつくった街のように見える。単に人工的というだけではない、どこか唐突な印象を受ける。
さて、神宮外苑は我が国の都市史上最大規模のあるプロジェクトの一環として生まれた場所だ。そのプロジェクト全体の規模は、総面積にして118ha。近年の再開発のha数を出してみると、六本木ヒルズが約11.6ha、豊洲市場が約40haだ。直近では山手線新駅高輪ゲートウェイ駅の開発で13ha。神宮外苑が青山という都心であることを踏まえるまでもなく、他に類を見ない規模の再開発だったのだ。
もったいつけたがこの大規模プロジェクトとは、明治神宮の創建のこと。明治神宮には、内苑と外苑がある。内苑は正殿や宝物殿といった神宮の建物だけでなく、広大な敷地の中に包括する森の空間も含まれる。外苑は、内苑の外に配した庭という意味である。ちなみに表参道も明治神宮内苑の正面にあたる参道として同時期に整備された道なのだ。そのことだけでもプロジェクトの巨大さを感じる。
当時の日本の神社は単なる宗教施設ではない。伊勢神宮を頂点とする神道の体系があり、それらは内務省神社局によって管理されていた、いわゆる“国家神道”。内苑は国家予算の一方、外苑は民間資金でつくられた。当時から外苑は、多くのスポーツ施設が集積する場所だった。いまとなってはこうしたスポーツ施設や会場、さらには銀杏並木のほうが公共性の高い場所のように感じられるが、大正時代の感覚では違ったのだろう。公と私の感覚が当時と現在で真逆に変わったのも面白いところ。
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February 07, 2020 at 03:00PM
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