男女格差121位に沈む日本。政治分野とともに足を引っ張るのが経済で、管理職の女性比率の低さが指摘されます。なぜ女性登用が進まないのか。人材開発論が専門の中原淳・立教大教授が注意を促すのが、上司が抱く女性部下への「無意識の偏見」です。管理職のみなさん、知らず知らず女性の部下を「差別」していませんか?
なかはら・じゅん 1975年生まれ。立教大経営学部教授。専門は人材開発論・組織開発論。主な著書に「女性の視点で見直す人材育成」(共著)、「駆け出しマネジャーの成長論」。
拡大する「女性登用を進めるには、企業トップの姿勢が重要だ」と語る中原淳・立教大教授=東京都豊島区、林幹益撮影
――女性登用の問題は、企業や働く側にとってどんな意味がありますか。
企業にとっては、人手不足の観点でまず考える必要があります。イノベーション、生産性アップに並ぶ経営課題です。パーソル総合研究所と中央大学の阿部正浩先生の共同研究の推計では、2030年までに640万人以上が不足すると言われています。
その解決策は、生産性を上げるか、もしくは入り口を増やすか出口を減らすか。生産性はロボットやAIの活用ですね。入り口とは採用を増やすことですが、人手不足の中で簡単ではない。出口を減らすとは離職を減らすことで、女性が働き続けるような環境をつくらないといけないということですね。
働く側の視点でみると、非正規が増え、年功序列でもなくなってきて、男性も給与が右肩上がりでなくフラットになっている。子どもにお金がかかる40歳以上が厳しくなってきていて、共働きでないと家計が支えられない。専業主婦世帯でやっていくのは苦しくなってきていて、夫婦とも働ける体制を整えた方がいいという議論が生まれています。また、人生100年時代、女性の方が男性よりも寿命が長いことも、老後のお金を考えると、考えていかなくてはならないことです。
――経営陣に占める女性比率が高い企業の方が、株価など業績がよいとの議論もあります。
女性登用と企業業績とに何らかの相関関係があるのは分かっていても、因果関係の証明は難しい。それでも、デパートに行けば分かるようにサービスの主な消費者は女性で、消費者に近い人がサービス業の意思決定権者にいた方がいいというのは、誰でも分かることですね。
企業向けの管理職研修で講師をよく務めるのですが、製造業では9割男性、「男塾」ですね。女性を増やそうとがんばってはいると思いますが、女性の参加はぽつん、ぽつんです。統計的差別という言葉がありますね。過去の統計データから活躍している女性は少なく、すぐに退職してしまう傾向があるので、女性は重要なポジションにつけるべきではない、と考えてしまうバイアスです。そもそも活躍できる環境を作っていないから活躍できないだけなのに。
――ある調査では、入社1年目での管理職志向が女性は男性に比べて低く、入社年次を経るごとに女性の落ち込みが大きくなっていくようですが。
長時間労働の厳しさがあり、育児との両立はできないかも、あんな働き方でないと管理職になれないなら私無理かも、と入社してすぐ絶望するのでしょう。広島大学大学院の坂田桐子先生の研究によると、リーダーを経験したことのある人の割合は、社会に出るまでは女性の方が男性より多いのに、社会に出た後では男性の半分になってしまうそうです。そもそも管理職には男性的イメージがあり、リーダーは男がやるもんだと思われている面もあるのでしょう。
――「女性を登用したくても人材に乏しい」という声もあるようですが、そもそも企業は女性の人材を育ててきたのでしょうか?
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March 07, 2020 at 03:30PM
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