独自の商品や世界観をもつブランドがEC事業を始める場合、従来のようにモールからではなく、はじめから本格的に自社サイトに取り組む例が増えつつある。その場合に課題となるのが、そのブランドの世界観をどうやってECで表現するかということだ。株式会社阪急スタイルレーベルズが展開するブランド「DOUBLEDAY(ダブルデイ)」は、アイテック阪急阪神株式会社のECサイト構築システム「HIT-MALL」を導入してそれを実現した。その企画から実際にECサイトがオープンし、運用していくまでのことを、株式会社スタイルレーベルズ 橋本 洋平 氏と、松葉 佳苗 氏に伺った。
■ブランドイメージを表現できるECサイト
阪急スタイルレーベルズの自社ECサイト「DOUBLEDAY ONLINE SHOP」がオープンしたのは2018年9月。DOUBLEDAY(ダブルデイ)は、『1日を2倍楽しく過ごすヒントが見つかるライフスタイルショップ』をコンセプトとして、家具、雑貨、ファッション雑貨などを扱うブランド。関西を中心に実店舗を展開し、長く30年ほど続いているブランドだが、本格的なオンラインショップはこれがはじめて。
ダブルデイのECサイトの企画が始まったのは、オープンから2年ほど前の2016年ごろだという。
橋本氏:「僕はこれまでにグループ内のいくつかの新規事業の立ち上げに関わっていたのですが、2016年の始めごろから、会社としてそろそろEC事業に本格的に取り組んでいかないといけないという流れがあり、いろいろなメンバーが集まり、調査・検討を始めました」。
そこから1年ほど情報収集を行い、いくつかのサービスを検討した上で、アイテック阪急阪神のHIT-MALL(ヒットモール)の導入が決まった。検討するなかで優先されたのが、ダブルデイのブランドイメージを十分に表現できるかという点だった。
松葉氏:「HIT-MALLには、こちらのブランドイメージを表現できるという感触がありました。ダブルデイのイメージは、シンプルだけど上質、丁寧な暮らしといったもの。それが直感的に伝わる表現ができて、サイトのデザインが合うことが第一優先ともいえる点でした。私はダブルデイの販促にずっと携わっていて、ブランドサイトではすでにアイテック阪急阪神さんにお世話になっていたので、それも安心材料でした」。
橋本氏:「ブランドイメージを表現するため、検討の初期段階から、自由度の高いカスタマイズができるサービスを選ぶという方針があり、HIT-MALLはそれに合致していました。また、グループ的にセキュリティ面で高い水準が必要なのですが、HIT-MALLの場合、そういった面でも社内の評価が高かったです」。
■ECの壁をひとつひとつ解決する
HIT-MALLによるECサイト構築を進めるなかで、実店舗運営とは異なるECの考え方に戸惑うこともあったという。そこを、アイテック阪急阪神のサポートによりひとつひとつ解決していった。
松葉氏:「ECで何ができて何ができないのか、1~100まで全部教えていただいたような感じです。アイテック阪急阪神さんは小売業のECサイト構築実績を多数持っておられます。些細な疑問にも具体的な解決方法を提示していただけて非常に心強かったです。ライフスタイルショップとしての実店舗のサービスレベルをECでも可能な限り実現し、お客様のご要望にお応えする接客をしたいという思いで進めていました」。
橋本氏:「具体例をあげると、弊社ではギフトラッピングのニーズが多くあります。実店舗では、使用する包材や、どうラッピングするかなど、臨機応変に対応できますが、ECではすべてシステムに反映する必要があります。アイテック阪急阪神さんはそこで、どうやったらできるのかという実現案を、松竹梅をつけて落とし込んでくださり、良い落としどころを探ることができました」。
松葉氏:「ほかにも、ECは業務運用においてもすべてデータでのやりとりだというのも、それまでにない考え方で、勉強になりました。実店舗で使用するPOSの基幹システムをHIT-MALLに連携させて、受注データを物流に流し、物流からデータを返してもらう。常に3つのデータを確認して、データにないものは対応できないという、その辺りのこともみっちり教えていただきました」。
橋本氏:「EC業界では当たり前だと思いますが、例えば、割れ物を厳重に梱包したければ、対象商品をあらかじめ決めて、物流にデータを流す際はそのフラグを立てないといけない。実店舗のように『いい感じにしといてよ』では通じないんですよね」。
また、HIT-MALLは、アパレルECなどのサイトは多く手掛けてきたが、ダブルデイでは幅広い商品の扱いがあり、そのなかでも家具の販売というのがこれまでにないものだったそうだ。大型家具の場合、商品によって送料体系が異なったり、組み立てサービスの有無を選ぶ必要があるなど、その部分の機能のカスタマイズが行われた。
さらに、オープン1週間前になって、大きな問題が発生した。ダブルデイのECサイトでは、オープン当初、500商品ほどの取り扱いを予定していた。しかし、ささげ業務が想定よりも遅れており、このままでは間に合わないという事態になったのだ。
橋本氏:「最終的に、無理を承知の上で6000枚くらいの画像処理を、アイテックさんにお任せしました。最後まで自社で進めていたら、予定通りオープンできていなかったと思います」。
アイテック阪急阪神はECの運用代行も行っており、ECサイト運用に関わる各種業務についてノウハウがある。とはいえ、このときは1週間という限られた期間であり、通常では難しい対応だったそうだが、予定通りオープンすることができた。
■運用してはじめてわかることもある
いくつもの壁を乗り越えて無事ECサイトがオープンして1年半ほどが経ち、現在は月数百件の注文があるまでに成長してきた。とはいえ、ここまでくるには試行錯誤の連続だったそうだ。
松葉氏:「実店舗で売れている商品でもECでは売れないということもありました。ECではサイトに来てもらい、そこにある情報だけで商品に納得していただかないといけません。実店舗では接客のニュアンスで伝えられることが、ECではできない。そこで、手触りなどリアルさが伝わる写真や商品詳細など、商品ページも作り込んでいます。当初の仕様では文字数が足りなくなり、機能拡張をしてもらったくらいです」。
橋本氏:「オープン前は想定していなかったキャンペーンのアイデアが出てきて、機能を追加してもらったこともあります。たとえば、期間中に購入された方にポイントを付与するというキャンペーンを考えたときには、対象会員に一括でポイントを付与できる機能を付けてもらいました」。
売上アップのために試行錯誤を重ねるなか、ダブルデイが力を入れている施策のひとつが、Instagramの利用だ。ダブルデイのECサイトを訪れるユーザーは35~44歳女性がメイン。Instagramはユーザー層が低めといわれるが、ダブルデイのInstagramアカウントは、25~34歳の層と35~44歳の層に同程度に閲覧されているそうだ。
橋本氏:「Instagramが象徴していると思うのですが、『共感』というのは、ダブルデイのキーワードだと思います。部屋を見渡したときに、ダブルデイがセレクトしている家具や雑貨、商品がそろっている。そんな生活に共感してもらえる人にアプローチしていきたいです」。
松葉氏:「ダブルデイの商品の幅は本当に広いので、いろいろな商品に出会っていただけると思います。世の中に安くてお得な商品はたくさんありますが、そんな中でも、ちょっと上質なもの、作り手のこだわりが感じられるようなものをあえて選びたいという方に向けて、ダブルデイのコンセプトが伝われば嬉しいです」。
また今後、動画の活用や、業務効率化のためのツール連携、新たな決済手段への対応なども考えているという。サイトがオープンしてからも機能の追加などでアイテック阪急阪神とは密にやり取りが続いているようだ。
ただサービスを提供するだけでなく、一緒に考え、プロジェクトを作り上げていくチームとして、きめ細かな対応が伺える。
松葉氏:「システムを乗り換える事業者だけでなく、弊社のような『初めてECを構築する』事業者にとってアイテック阪急阪神さんの知見とご経験、サポート体制が非常に頼もしかったです。これからECを始められる方でも安心してお任せできると思います」。
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April 07, 2020 at 05:03AM
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