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女性の地位向上つなげたい 富士宮の窪田信子さん 講座続け40年、2万人受講 - 東京新聞

40年以上にわたって女性史講座で熱弁を振るう窪田信子さん=富士宮市内で

40年以上にわたって女性史講座で熱弁を振るう窪田信子さん=富士宮市内で

 富士宮市宮原の窪田信子さん(84)が「女性の地位向上につなげたい」との思いを胸に、地元で四十年以上にわたって女性史講座を続けている。きっかけは、戦時中の疎開先で目の当たりにした女性差別。戦後七十五年を前に「女性の権利を守るためには、平和が続かなければならない」と力を込める。(杉原雄介)

 六月二十四日、新型コロナウイルスの影響で四カ月ぶりとなった講座には、地域の女性ら二十人が参加した。窪田さんは源氏物語をテーマに、男に翻弄(ほんろう)される女たちの生き方に触れながら「この時代は女ばかり窮屈だった」などと解説。講座後には「みんな熱心に聞きに来てくれた。話し始めると乗っちゃうね」と笑顔を見せた。

 一九三六年に兵庫県で生まれた。戦時色が濃くなる中、科学者だった父卓郎さんは国策により、理化学研究所で働きづめとなり、窪田さんが五歳の時に過労で亡くなった。

4歳の窪田信子さんと父卓郎さん。卓郎さんは翌年、国策により働きすぎたことが原因で亡くなる(窪田さん提供)

4歳の窪田信子さんと父卓郎さん。卓郎さんは翌年、国策により働きすぎたことが原因で亡くなる(窪田さん提供)

 四一年に太平洋戦争が始まり、戦局が悪化した四四年には父の実家がある埼玉県久喜市に疎開。そこで見たのが、農家で行われていた「足入れ婚」だった。

 女性は農閑期の冬に「仮の妻」として男性の実家に入り、農繁期には姑(しゅうとめ)らが女性の働きぶりをチェック。認められれば秋に正式な夫婦となる、という風習だ。妻たちは朝三時ごろに起きて朝食の準備と後片付けを行い、終われば農作業へと行く。風呂は家族の中で最後に入り、入浴後の掃除も課せられていた。

 窪田さんは「女性ははだしで働いていて、座敷に上がることもなかった。結婚が認められずに自殺した人もいた」と振り返る。「牛や馬の方が大切にされてるようだった。人権なんてなかった」

 足入れ婚の実態を知ったことがきっかけで女性の人権に関心を抱き、明治大法学部に進学。卒業後は東京や静岡で高校教師として社会科や音楽を教え、六〇年に精神科医の二郎さん(二三〜二〇〇四年)と結婚。南富士病院(富士宮市宮原)の開業に尽力した。

 忙しい日々の中でも女性史に関する本を読みあさって勉強を続け、七六年に「富士地区女性史女性学講座」をスタートさせた。古事記から近代文学までの登場人物や時代背景に焦点を当て、家族のあり方や女性の地位の移り変わりなどを読み解いていく。沼津市などから訪れる人もおり、これまでに延べ二万人ほどが受講したという。

 女性史と合わせ、訴えてきたのが憲法九条の護持だ。「長崎にいた祖母は原爆で亡くなった。『銃後の守り』で巻き込まれる女性が発言力を強め、戦争を必死に止めないといけない」と力を込める。そのためにも「女性がもっと勉強しないといけない」。

 「今は女性が何でもできる時代だが、選択肢が多いと生き方を決めるのが難しい。『しがらみが多い時代の方が生きやすかった』とならないよう、自己を律してほしい」とエールを送る。

     ◇

◆社会進出不十分

 戦前の日本では女性の権利が制限され、参政権などが認められていなかった。民法では、結婚した女性は「無能力者」として財産を全て夫に管理されるほか、法律行為をするには夫の許可が必要とされた。

 戦後は日本国憲法で性差別が禁じられ、女性参政権や離婚時の財産分与請求権などが認められた。一九八五年には男女雇用機会均等法が制定され、企業の採用や昇進などで男女を平等に扱うよう定められた。

 だが、女性の社会進出は十分に進んでいないのが現状だ。国会議員における女性の割合は14・3%。内閣府の調査では、上場企業での女性役員の割合は二〇一九年で5・2%にとどまっている。

 男女平等の程度を示す世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数2020」で、日本は百五十三カ国中百二十一位。経済(百十五位)、政治(百四十四位)が特に低かった。

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