ツイッター上で「高収入」「裏バイト」とうたい、特殊詐欺の「受け子」などに勧誘する投稿が相次いでいる。アルバイト感覚で応募した若者が指示役に巧みに誘導され、群馬県内で起きたアポ電強盗の実行役になったケースもあった。県警は5月末から、こうした投稿にリプライ(返信)で警告する取り組みを始めた。(赤沢由梨佳)
■イヤホンで指示
「指示役に言われるがままだった……」。昨年11月23日、事前にアポ電を受けていた高崎市の70歳代女性宅に侵入し、女性の頭などを殴って金品を奪おうとした神奈川県横須賀市の男(21)。強盗未遂罪などに問われ、前橋地裁での公判で犯行状況を振り返った。
飲食店員だった男は事件の前月、ツイッターで「グレーもブラックも稼げる仕事あります」とのメッセージを受け取った。返信すると、メッセージが自動消去される通信アプリ「テレグラム」のグループに招待された。名前や住所を書いた書類を「リュウ」と名乗る勧誘役に送った。
犯行当日の朝、指示されたワイヤレスイヤホンやハンマーを用意し、JRさいたま新都心駅に向かった。バイト内容は知らなかった。初対面の男2人の車に乗り、高崎に移動。イヤホンでリュウと通話をしながら女性宅のチャイムを押した。怪しまれて警察を呼ぶと言われたが、イヤホンの声は「突入! いけいけ!」と叫んだ。「殺すぞ」「指折るぞ」。耳に響くリュウの声をリピートしながら女性を脅し、ハンマーで電話機をたたき壊した。
「個人情報を送り、暴力団を名乗る見張り役もいて逃げられなかった。強盗と知っていたら行かなかった」。証言台で男は肩を落とした。今年5月、懲役3年6月の実刑判決が言い渡された。
特殊詐欺グループは、アポ電で多額の現金があることがわかれば、「強盗をしてでも金品を奪おうとする」(県警幹部)。詐欺罪の罰則は上限が懲役10年だが、強盗致傷は無期懲役、強盗殺人は死刑だ。安易に誘いに乗った代償は大きい。
■トカゲのしっぽ
県警捜査2課によると、県警が昨年、特殊詐欺で逮捕した47人のうち41人は10~20歳代だった。SNSに慣れた若い世代がバイト感覚で加担しているようだ。県内などで特殊詐欺に関与し、詐欺と窃盗罪で2月に懲役4年6月の判決を受けた東京都江戸川区の元俳優(25)もツイッターで「高額バイト」と検索していた。
役割別では、現金を受け取る「受け子」や引き出す「出し子」など、グループの末端が7割以上。グループ上層部はツイッターで勧誘し、末端と顔を合わせずにSNSで指示を出す。ある県警幹部は「他人名義の端末で投稿していて、上層部の特定は難しい。トカゲのしっぽ切りに最適な方法だ」と頭を抱える。
県警は5月29日から、「闇バイト」「UD(受け出し)」など、特殊詐欺の勧誘を連想させる投稿に対し、公式アカウントから「不適切な書き込み」などとリプライしている。22日までに11件返信し、7件が削除された。ハッシュタグ(検索用ワード)機能も使い、たとえば「闇バイト」で検索していると警告が表示される。「#闇バイトで検索しているあなた。人生は一度だけ。考え直して」
◆アポ電=アポイントメント(予約)電話の略語で、特殊詐欺グループなどが資産状況やタンス預金の保管場所、口座の暗証番号、同居人の有無などを事前に聞き出すためにかける。県警によると、県内では昨年4~12月に1494件のアポ電が確認されている。
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June 24, 2020 at 09:55AM
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指示役、女性宅でイヤホンごしに「突入!」…「裏バイト」応募したらアポ電強盗役 - 読売新聞
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