安倍政権が成長戦略の柱の一つに掲げる「 女性活躍の推進」に強い逆風が吹いている。コロナショックで急激に経済が悪化する中、女性就業者数は4月に前年比で約8年ぶりの減少に転じ、雇用の調整弁となりがちな非正規雇用者の過半を占める女性の立場の弱さが浮き彫りになった。
安倍晋三首相が2012年12月の政権復帰以来、女性の社会進出を積極的に後押ししてきた結果、新たに330万人の女性が職に 就いた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて政府が緊急事態宣言に踏み切った4月以降は、女性の非正規雇用者が真っ先に解雇や雇い止めに追い込まれている。
緊急事態宣言下の5月、小久保泰子さん(49)は2年間パートとして勤めた土産卸売会社から解雇を言い渡された。都内で夫、小学3年生の息子と暮らす小久保さんは、子育てにも協力的だった職場は「お金で買えないものだった」と肩を落とす。自身の収入が途絶えて不安だが、第2波による休校の可能性が払拭(ふっしょく)できず、復職に踏み切れずにいる。
大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、「アベノミクスの最大の功績はインバウンドで、2番目は女性の雇用」と指摘。しかし、こうした成果は新型コロナウイルスの世界的流行によって「一瞬にして吹き飛ばされた」とし、女性に対する影響は特に「象徴的だ」と語る。
労働力調査によると、パートやアルバイトなど非正規雇用者は 4月に同97万人、 5月には同61万人それぞれ減少し、女性の割合がいずれも7割を超えた。一方、正規雇用者は4月に同63万人増、5月に同1万人減だった。雇用者全体に占める非正規雇用者の割合は、5月時点で女性が53%と男性の22%を大きく上回る。
労働政策研究・研修機構(JILPT)が5月下旬に実施した「新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する 調査」によると、未成年の子供がいる女性会社員の3-4月の平均税込み月収は通常月に比べ8.8%減と、男性会社員の3.9%減を上回る 減少率となった。
山猫総合研究所代表の三浦瑠麗氏は、「家事や育児の約8割を女性が担っている結果、子供の休校で女性がまず働けなくなり、非正規労働者の女性が真っ先に雇い止めに遭っている」と指摘。「政府が意図せざる男女間の格差拡大を招いてしまった」とし、ジェンダー平等の観点に「壮大に逆行する事態が起きた」と危機感を示す。
「まず子供、次に仕事という女性が多い」。企業に対して産育休取得前から復帰前後までの一括サポートなどを実施しているNPO法人 Arrow Arrow代表理事の海野千尋氏はそう語る。3月に政府が全国的な臨時休校を要請した段階で、多くの女性は自主的に就業を中断せざるを得ない状況に陥ったと指摘する。
JILPTの調査結果は、母親が職場から家庭に回帰した傾向を 裏付ける。自ら離職した人や求職活動をしていない人の割合が、未成年の子供がいる女性が2.2%と、男性の0.7%に比べて高い。休業者の割合は、男性の1.6%に対し、女性は4.7%で、未成年の子どもがいる女性では7.1%に達した。
内閣府の男女共同参画局によると、6歳未満の幼い子供を持つ日本の夫婦のうち、妻は夫の6倍の時間を育児と 家事に費やしている。米国、フランス、ドイツでは、この比率はほぼ2倍となっている。
日本女性の約4割が小売りや観光、外食のサービス・事務業に従事していることも、コロナショックの影響が男性よりも大きい理由の一つだ。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、サービス業で働く非正規社員の現金給与総額は、 4月に他の産業を上回る減少となった。
IHSマークイットの田口はるみ主席エコノミストは、小売りは自粛解除に伴って雇用が回復に向かう傾向だが、観光業では影響が長期化する可能性が高いため、今後も失業者が増える可能性は大きいとみる。
日本女性の就業者数は 昨年6月に初めて3000万人を突破した。ただ、非正規雇用者が一貫して増えているのに対して、正規雇用者の比率は20年前と比べて1割減っている。経済協力開発機構(OECD)加盟国の半数以上で、女性雇用者のうち非正規が占める割合が減少傾向にある中、日本では05年と18年を比較すると6.6% 上昇しており、34カ国中で伸び率がトップだった。
女性リーダー
安倍政権は15年に男女間の実質的な機会の平等を保つため、指導的地位に女性が占める割合を「20年までに30%」まで引き上げる数値目標を 設定した。しかし、現状は目標には程遠く、政府は達成年限を「30年までの可能な限り早期」に繰り延べる調整に入ったと毎日新聞が 報じた。
安倍政権発足から既に7年半が経過したが、世界経済フォーラムが公表した男女格差に関する最新の 報告書で、日本は153カ国中121位に依然とどまっている。
特に政治の分野における女性進出の遅れは著しい。日本は政治エンパワーメントの部門で153カ国中144位。現在19人いる 閣僚のうち女性はわずか3人で、全国47都道府県の女性 知事は小池百合子東京都知事と吉村美栄子山形県知事の2人だけだ。
内閣府によると、日本の女性議員の比率は増加傾向にあるが、19年の時点で、衆議院9.9%、参議院22.9%に とどまっている。18年の時点で、女性議員が一人も いない町村議会は32.9%に上る。
ゴールドマン・サックス証券の副会長で、女性の活躍推進によって経済を活性化する「ウーマノミクス」という造語の生みの親でもあるキャシー・松井氏は、候補者や議席で一定数の女性登用を義務付けるクオータ制の導入が有効だと指摘する。2000年に同制度を導入した韓国では、08年時点で女性候補の比率が2倍以上に 上昇したという。
山猫総研の三浦氏は、公務員や政治家が率先して女性のリーダーシップや男女平等のロールモデルを示す必要があると指摘。「地方公務員の枠を増やし、そこでジェンダーギャップ解消のためにも福祉に専門性のある女性を活用すべきだ」と提言する。
ブルームバーグ・データによると、日本のTOPIX構成企業では、女性の最高経営責任者(CEO)は全体のわずか0.5%にとどまり、管理職に占める女性の割合も13.6%に過ぎない。
政府は1日、「すべての女性が輝く社会づくり本部」の会合を開き、女性の活躍を加速させる新たな方針を 決定した。安倍首相は、過去7年間で上場企業の女性役員が3倍以上に増えたとし、5月に改正した女性活躍推進法では、女性活躍に関する情報開示などの義務の対象企業が拡大されたと成果を訴えた。
これに対してゴールドマンの松井氏は、これら情報開示の問題点として「強制力がない」点を指摘、さらに標準化されておらず、どのようなタイプのデータを公開するか企業が選べるようになっているため、「企業間の比較が困難」な点を挙げている。
その上で、日本企業が非常に優秀な女性人材を引きつけたいのなら、「社内のジェンダーの状況について透明性を大きく向上させるところから始めなければならない」と提言。人口の半分でこうした「頭脳流出」が起きれば、日本社会と将来の世代にとって悲惨だと語る。
一方、野村総合研究所の武田佳奈上級コンサルタントは、在宅勤務の普及に伴い環境変化の兆しも見られると指摘する。同社が5月末に実施した 調査では、男性の在宅時間増加が家事育児に従事する時間の増加につながる可能性が示唆されたとし、「働き方を変えることで、家事や育児に携わる人が増えることがうかがえた」と言う。
日本では家事代行サービスの普及が遅れているが、経済的な負担や家に第三者を入れることへの心理的な抵抗感が利用の障壁だと武田氏は説明。コロナの影響で多くの女性が家族以外のサポートの重要性に気付いたとし、「家事代行サービスを活用し、仕事を継続することが大事だという意識は今回をきっかけに広まった」と語る。
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July 03, 2020 at 10:29AM
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